月の綺麗な夜に。
狂→アキラ
空に赤い月が輝いていて
薄暗い闇夜に一筋の閃光をはなつ。
赤と紺がまじりあったそれ。
「・・・・・。」
酒を片手に空をぼうっと眺める。
紺。
青。
・・・・あいつの色。
飲みながらも、普段の何気ないときも
ふと頭を過ぎるのは
あいつの鮮明な青と、緑の宝石。
今は失われた宝石。
・・・・俺のせいで輝きを失ったそれ。
「・・・・・アキラ。」
空を仰いでそう呟く。
誰も周りに居ないと、そう思っていたから。
「・・・なんですか?狂・・・」
後ろからひょこっと顔をだしたアキラに声がでなくなるほど
うろたえる。
「てめぇ・・・こんなところで何してやがる?」
「月が綺麗だから・・歩いていたんですよ。
狂みたいでしょう?あの紅い月。
そしたら・・・貴方がいたから、つい。」
自然に回り込んできて隣に腰を降ろすアキラ。
目の前に広がる青。
白い陶器のような肌。
伏せられた瞳・・・
「なんですか?狂・・・私の顔になにかついていますか?」
喋り掛けてくれるアキラを無視して見落とすことがないほど、
じっと見つめる。
別れたときから随分といろいろな所が成長していて・・
俺の知っているアキラであって、俺の知らないアキラでもある。
誰よりも知っていると思っていた。
誰よりも想われていると自惚れていた。
四年前、別れたときからできた小さな隙間。
「・・・・・・・・」
俺が知らないアキラ・・?
「だから・・・そんなに見つめないでくださいよ///」
近寄って肩を抱き寄せる
昔とは違いしっかりとした肩
うなじにかかる髪が
俺の理性を壊す。
「アキラ・・・」
顎に手をかけてくいっとひきよせ、
お互いのやわらかいものが触れ合う。
刹那のときだけだけれど。
「愛してるぜ・・・、アキラ・・・」
聞かせてくれ、その声で
『狂を愛しています』と・・・
紅い月は魔性の月
人をおかしくするといわれる月。
その夜に・・一夜だけでいいから奇跡をみせやがれ・・・
もう一度だけでいい。
アキラ・・・その瞳で俺をみろ・・・
月の輝く夜に、この・・丘の上で。
FIN